Googleアナリティクスで行うデータ活用の処方箋 vol.1 「アトリビューション分析を行うために必要な本当のこと。」
2016年11月8日
ライター:山浦 直宏
  1. アトリビューション分析の「目的」を改めて考えてみる。
  2. そこに“課題”はあるか?
  3. アトリビューション分析は“誰”の仕事?
  4. 最後はやっぱりデータが必要。
  5. 今回の処方箋

皆さんはアトリビューション分析を活用していますか?

Googleアナリティクスにはアトリビューション分析を行うためのレポートメニューがいくつか用意されています。
アトリビューション分析の目的はオンライン広告予算の最適化にあります。

具体的には、広告流入の間接効果を可視化することによって“ラストクリックコンバージョン“以外の”コンバージョンに貢献した広告流入“を評価し、そのような広告チャネルやメニュー、キャンペーンへなどへの広告予算の”リアロケーション(再分配)“を行うことで予算の全体最適を行う、というのがゴールになります。

各事業者にとって広告予算はマーケティングに掛かる様々な費用の中でも大きなボリュームを占めることが多く、この広告予算の最適化は多くの広告主にとっての重要課題となっていると思います。その意味でも、このアトリビューション分析は有効に利用できれば広告主企業のビジネスKPIに対して非常に大きなインパクトをもたらす取り組みであると言えます。

しかし、日々多くのお客様にGoogleアナリティクスを利用したデータ活用のコンサルティングを行っている中で、特にオンライン広告を展開されているお客様においてもこのアトリビューション分析が行えるGoogleアナリティクスのレポートを十分に活用されている企業はあまり多くありません。

そこには実に様々な理由が考えられますが、これだけ有用な分析手法があまり活用されていないのはなぜか?アトリビューション分析を(Googleアナリティクスで)行うためには何が必要なのか?を考えてみたいと思います。

Google アナリティクス のアトリビューションレポート
(図:Google アナリティクス のアトリビューションレポート)

アトリビューション分析の「目的」を改めて考えてみる。

アトリビューション分析は先にも述べたように、(特にオンライン)広告予算全体の最適化にあります。

最適化とは、簡単にいえば「同じコンバージョン数の成果を如何に効率的な予算(つまり少ない予算)で得ることができるか」、もしくは「同じ広告予算で如何に多くのコンバージョン数などの成果を上げることができるか」ということになります。

広告費は当然のことながら“効果のある”広告チャネル、媒体、キャンペーンやキーワードなどに投下されるのが良いわけですが、“予算の全体最適”の視点で言えばアトリビューション分析の対象としては、個別キャンペーン内のキーワードチューニングというような粒度で行うのではなく(もちろんそれでも構わないのですが)少なくとも媒体ごとやチャネルごと位の粒度で分析をしてアクション(予算のリアロケーション)に結び付ける事が重要になります。

そうなると、アトリビューション分析の目的は少なくとも、複数の媒体やチャネルを活用している広告主に対してその媒体やチャネル間での効果分析に基づく予算の最適化ということになります。

そこで考えていただきたいとことが2つあります。

  • アトリビューション分析の目的は、今の課題の解決になるか?
  • その分析を行いアクションを起こす(予算のリアロケーション)役割や組織はどこか?

ということです。

そこに“課題”はあるか?

まず、今抱えている皆さんの課題は何でしょうか?「ん?課題?そんなものは日々山積みでたくさんあるよ・・」というのが当然の答えになるかと思いますが、もしアトリビューション分析を行うにしてもただGoogleアナリティクスのレポート画面を見るだけで良いということはありません。

当然ながら様々な準備や分析に工数がかかります。
この記事の後段でもふれますが、場合によっては組織を考え直したり広告代理店なども巻き込みながら動かしていかなければならない場合もあるかもしれません。

つまり、そこまでして取り組むに値する“課題”が本当にあるか?ということをきちんと考える必要があります。

「そんなこと言ったら、面倒くさくてアトリビューション分析なんか増々取組みたくなくなるよ・・。」という声も聞こえてきそうですが、逆に言えばしっかりとした課題認識もなく中途半端に取り組んだせいで結果として「アトリビューション分析はやってみたが難しいしよく分からないし、あまり役に立たない」となり放置されている・・というようなケースも多いように思います。

前述の通り、アトリビューション分析の目的自体はとてもシンプルです。その上で、皆さんの中にそれによって“解決すべき課題が本当にあるか”をまずは考え、明確にすることが重要かと思います。

アトリビューション分析は“誰”の仕事?

私は普段Googleアナリティクスのデータ活用におけるコンサルティングを行うことが多いのですが、ツールの特性上“広告主”企業様や“広告担当者”(場合によっては広告代理店の広告運用担当者)に向けてGoogleアナリティクスの機能や活用のお話しをする機会が多くあります。

その中でアトリビューション分析の話(目的や取り組むメリット、期待できる効果など)を当然するわけですが、すんなり話が進むことは(経験上)あまり多くありません(広告の分析とセグメントにGoogleアナリティクスデータを活用すること自体にもまだまだハードルがある企業様が多い中で、当然といえば当然かもしれませんが・・)。

アトリビューション分析の説明やどんなメリットが期待できるか?を理解されないということは無いと思いますが、ほぼ皆さんの顔を拝見していると「・・・それって私の仕事・・・・??」というような顔をされているように感じることがほとんどです。

「目的」のところでも申し上げた通り、最終的には広告予算のリアロケーション(再配分)にあるとするならば、それは本来だれの仕事でしょうか?もしくは、アトリビューション分析自体が新しい取り組みだとすれば、その目的とアクションからして「だれ」が行うのが一番効果的と考えるべきでしょうか?

場合によっては、分析自体を行う人と分析結果から予算のリアロケーションの判断(意思決定)をして実際に予算の配分を決められる人という役割分担も必要と考えるべきかもしれません。

広告代理店の運用担当者やプランナーさん達に話をすると、キャンペーン内のキーワードのチューニングは日々やるけれどチャネルや媒体、キャンペーン間の予算配分って運用のタスクじゃないよね・・という感じで「・・私の仕事じゃないな・・」という感じになります(そもそもGA触ったことないし・・的な)。

検索広告とディスプレイ広告などの種別で複数の代理店で運用されているようなケースは尚更です。
ディスプレイ広告のアシスト貢献が可視化されてサーチの予算削られたらたまったものではありません(汗)。これも「・・私の仕事じゃありません・・」となります(GAのデータ見るだけで作業増えるのに予算が増えないならメリットなし・・・的な)。

では、広告主のご担当者としてはどうでしょうか?

個々のキャンペーンの効果を上げることは重要ですが、チャネルや種別による予算のコントロールとそれによる全体効果の向上となると担当者レベルではなかなか決められないのではないでしょうか。
担当代理店の売りげに影響するかもしれないとなると尚更ですよね。これもまた「・・・私の仕事・・?」となります(そこまでの責任負えないし・・的な)。もちろん、業種・業態や各社の運用体制は様々ですのですべてが当てはまるという話ではありませんが部分的にでも共感いただけるところはあるのではないでしょうか。

一番重要なことは、最後は意思決定とアクションに繋がらなければ分析もそのためのデータも意味がない、ということです。

どの粒度(チャネル、媒体、広告種別、キャンペーン単位など)でのリアロケーションが可能かは様々かと思いますが“予算配分”という大きな意思決定がアクションでるならば、その役割(どの組織のその役割、役職の人か)をきちんと決めておく必要があるということになります。

一番複雑なケースで言えば、予算を持っている広告主企業様、広告の運用を担当している広告代理店、そしてGoogleアナリティクスの導入とサポートを担当してるコンサル会社(弊社のような)という「3者」が共にこの目的の理解と課題認識を持ちアトリビューション分析という大きな取組みを進めるといういわゆる“座組み”まで必要な場合もあるでしょう。

このように、アトリビューション分析をきちんと取り組むには(内製にしろ代理店による運用にしろ)その役割(分析する人、意思決定しアクションする人など)を座組みの話し合いの中で決めておくことが大事になります。

ここまで考えるとお分かりの通り、「分析とその結果」による「意思決定とアクション」は“自動化”されていません。分析の結果は具体的な金額で予算配分を示してくれるわけではありません。必ず誰かが判断し予算のリアロケーションという重要な決定を下さないといけません。

この仕事は今までのオンライン広告の業務や運用の中では無かった仕事です。

ですから、今までの座組みのままで“アトリビューション分析“に取り組もうとしても、重要な決定は下されず宙に浮いたままとなってしまうのです。

誰が推し進めていくのか。 どこが意思決定を行うのか、“私の仕事だ”と言える人や部署がいて、初めて活用ができるものなのです。

最後はやっぱりデータが必要。

さて、“座組み”も整い目的と課題も共有されたとします。

いよいよ分析に取り掛かりたいわけですが、記事の冒頭でも申し上げた通りGoogleアナリティクスにはアトリビューション分析のための各種レポートメニューが揃っています。

それらのレポートメニューを見れば、アシスト貢献を可視化しアトリビューションモデルの適用によって、どの程度の改善の可能性が見込めるのか(変化率)をすぐに確認することができるようになっています。

ですので、分析といっても“データサイエンティスト”級の分析者が必要なわけでもなく場合によっては“意思決定者”が多少の設定とレポートの見方を習得すれば直接分析結果を見て意思決定をするということも可能です。

「なんだ、簡単じゃないか!」という声も聞こえてきそうですが、そうなんです、実に簡単なんですよ(Googleアナリティクスってすごいんですよ!)。レポート画面の見方をちゃんと理解すれば、分析結果を見ることは、実はとっても簡単なんです。

でも・・実際にレポート画面を見てみると大体のケースで・・・無いんです・・・・“データ”が。

コンバージョン>アトリビューション>モデル比較ツール
(図:コンバージョン>アトリビューション>モデル比較ツール)

確かにレポート画面には集計や分析結果が反映されるようにきちんとわかりやすくテーブルが組まれています。

でも、(必要な)データが入っていない・・。
AdWordsのデータは入ってるけどYahooのデータがない・・。
セッション数は分かるけど一番重要なコストデータが無い。キャンペーンパラメータの仕様が代理店間でバラバラでうまく集計できていない・・。
(そもそも、キャンペーンデータをGAで見たことないし・・・的な(笑))
分析にはデータが必要。データを得るには計測が必要(GAのタグを貼ればおしまい、ではありませんよ!)。分析の目的を理解し、その結果を出すために必要なデータが取得できていなければ、Googleアナリティクスも“ただの箱?”ですし、整えた座組みも行き場を失なってしまいます。

私の印象では、デジタルマーケティング界隈での日本国内においては“分析”という言葉が多く使われ議論されることはありますが、海外の様子をみていると“Measurement(計測)”という言葉の方が多く使われている印象があります。

Googleのセミナーや記事でも“Action”と“Measurement”がセットで語られることが多いと感じています。

極論ですが分析のプロセスは今後いずれ”AI”に取って代わられるかもしれないという声もあります。
であれば尚更、有用な分析結果を出すには、いかに分析に必要なデータを、正確にリアルタイムに“AI”に渡せるか?が重要であり、そのための計測設計や取得のための実装が重要になるということは言うまでもないと思います。

実際のプロセスとしても分析よりまず先に計測をきちんと考える必要があるのではないでしょうか。

今回の処方箋

  1. アトリビューション分析の目的や期待できる効果を明確にし確認しよう。
  2. その分析は重要な課題の解決につながるか?(分析ありきではなく)分析を行うための課題が本当にあるか?を確認しよう。
  3. 座組みを整え役割を決めよう。(それは私の仕事です!・・的な)※アトリビューション分析は従来の運用には乗りません。
  4. 必要なデータを定義し、計測、取得、集計が可能な環境を、まず整えよう。

May the DATA be with you!

※本稿は、Google アナリティクス で行うアトリビューション分析を想定しており、AdWords管理画面で行えるキーワード単位のアトリビューション分析については本テーマ課題の対象外とさせていただいております。

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この記事を書いた人
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山浦 直宏
COO
Google アナリティクス 360、Google マーケティングプラットフォーム活用を中心としたデジタルマーケティングコンサルタント。ネット広告の黎明期より一貫して、ネット広告、デジタルマーケティング畑を歩む。講師を務める「Google アナリティクスIQ講座」では資格取得者900名余を育成する一方で、立教大学(元非常勤講師)など複数の大学にて人材育成にも取り組む。講座・講演、業界誌やネットメディアなどでの執筆・寄稿多数。
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